物語のティータイム

2021年7月24日

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「物語のティータイム お菓子と暮らしとイギリス児童文学

北野佐久子 岩波書店

 

人間ドックでいつも血糖値が引っかかる。投薬治療はしていないものの、境界型糖尿病と宣告され、数ヶ月に一回、血液検査と栄養士の指導を受ける身の上である。スイーツなんてよほどのことがない限り、食べてはいけない身の上である。もともと甘いものはそれほど好きではないので苦痛というほどではないが、たまにアイスクリームやケーキなどを食べたいときだってある。たまに特別に食べちゃうときもある。食べられないときは、写真を見たり、レシピを眺める。気が済むというわけでもないが、少しは落ち着く、のかもしれない。
 
児童文学にはよく美味しそうなお菓子が登場する。子ども時代は今ほど豊富なお菓子が流通する時代ではなかったので、名前だけ見てはどんなお菓子だろう、と想像して憧れたものである。
 
この本は、イギリス児童文学に、どんなお菓子がどのように登場するのか、それは物語のどんな場面であるのか、そしてそのお菓子が実際に生活の中でどのように作られ、どのように食べられているのか、などを丁寧に解説してある。そして、最後にはレシピも載っている。取り上げられているのは、「ライオンと魔女」「たのしい川べ」「秘密の花園」「林檎畑のマーティン・ピピン」「ツバメ号とアマゾン号」「時の旅人」「ピーターラビットの絵本」「トムは真夜中の庭で」「くまのパディントン」「風にのってきたメアリー・ポピンズ」である。おお、何たる王道!!
 
私は、お菓子を手作りすることはないのだが、レシピから、それが何で出来ているのか、どの程度火を入れるのか、を知るだけで、つくったような気分になる。味だって、なんとなくわかった気分になってしまう。そのあたりで満足しておけば、血糖値も上がらない。そんなことのために作られた本ではないのだがなあ。許されよ。

2017/10/18