パーマネント神喜劇

2021年7月24日

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「パーマネント神喜劇」万城目学 新潮社

 

私は、クリスチャンホームで育った。物心ついた頃には毎週日曜日は教会に通っていた。そういうものだと思っていたので、小学生になって、同級生がペテロもパウロもモーゼもヨセフも知らないこと、賛美歌を歌えないことに驚いた。「主の祈り」を言い換えるパロディを思いついて練り上げ、友達に聞かせてたのに何の反応もなくてつまらなかった。という話を何の気なしに我が家の食卓でしたら、神を冒涜するな!!といきなり叱りつけられた。私はものすごく悪いことをした、罪深い子だと言われた。ショックだった。
 
そんな家庭に育ったので、神関係を扱うときには、やや緊張するクセが未だにかすかに残っている。神社にお参りすると、どこかいけないことをやっているような感覚が密かにあって、それがより味わいを深くしているような、変な気持ちになる。であるが故に、あらゆる宗教について妙な知識欲もある。余計に神社やお寺にお参りしたくなるような天邪鬼な気分も多分にある。
 
そんな私には、この本は、より面白いというか、心の中のいけない部分をくすぐられるような、こっそりいけないことをしているような味付けが一段加味されている気がする。
 
この本は、とある神社の担当をしている神様の昇進試験に関わる物語である。この神様が、非常に人間臭いというか、人情あふれるというか、ちょっと抜けているというか、そこが愛せる人、じゃない神なのである。日本の神様っていいよなあ、って思ってしまう。だってこんなにいじっても怒られないんだものね。
 
物語の中で、懐かしい子にも会った。万城目さんの物語はほのぼのと暖かくていいなあ、と思った。この本は、震災以後に書かれたものである。ということが、読んでいてちゃんと伝わった。楽しいけれど、それだけじゃない、祈るような気持ちも込められていると思う。

2017/12/8