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「ムーミン谷の仲間たち」トーベ・ヤンソン 講談社
「ムーミン谷の冬」の次に読んだのはこれである。これも昔読んだなあ。でも、記憶は本当におぼろげだ。ムーミン谷に住む仲間たちの9つの物語が収められている。
身体の見えないニンニの話はうっすら覚えていた。それから、ムーミンパパが、ある日自分でもよくわからない衝動にかられてニョロニョロと船出する話も。今読み返しても、この2つはなかなか印象的だ。
ムーミンシリーズは凄いよな、深いよな、と思う。トーベ・ヤンソンの孤独に耐え自立を愛する強さを感じる。小さな生き物や弱そうな生き物も、高慢ちきな生き物も、すべて等しく尊重され、認められ、大事にされる。支配されず、保護されず、捨て去られず、ただ見守られ、信頼されている。これって、すごい。
こどものころ、突然家族を捨てて一人で旅に出てしまうムーミンパパってなんて勝手なんだろう、と思った。でも、今はわかる。ムーミンパパは、その旅を経たからこそ、家に帰ってこれたのだし、そのことでもっと自分を理解できたのだし、家族といることも愛せるようになったのだ。
身体の見えないニンニにあるったけ意地悪を言っちゃうミイも、子供の頃は嫌なやつだとしか思わなかった。でも、ミイは誰に対しても、手加減しない。弱そうだから、かわいそうがってやるなんてことはしない。そういう存在がいたからこそ、ニンニも、本気で怒ったり笑ったりできるようになる。誰かを大事にすることは、腫れ物に触るように扱うことではない。
だからといって、子ども時代に私の感じたことが間違いだったわけでもない。その時その時で感じたことが積み重なって、今の自分がいる。読み返したおかげで、そんなふうに思えた。いい本だった。
2017/1/20