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「ムーミン谷の冬」トーベ・ヤンソン 講談社
遅々として進まないムーミンシリーズ読み返しの旅であるが、ようやく折り返し地点まできた。読んでわかったのだが、たぶん、子ども時代、このシリーズの中で私がいちばん好きだったのはこの作品である。
冬眠中になぜか目覚めてしまったムーミントロールの冬の日々の物語。家族はみんな寝静まっているけれど、ちびのミイやおしゃまさんやサロメちゃん、ヘムレンさんなどは起きている。見知らぬ客人も次々とやってくる。
家族の中でたった一人冬の時間を過ごすというシチュエーションが子どもの私にはひどく魅力的だった。安全な家はあるけれど、誰にもとめられず、好きなことができて、外には雪が降り積もっている。自分ひとりの決意と判断で過ごす、暗く寒いけれどわくわくする世界。ムーミントロールは怒りんぼだったり怖がりだったりもするけれど、ちゃんと筋は通すし、思いやり深いし、思慮もある。そして何より冬を楽しむ。いいなあ、と憧れた気持ちがいきなり蘇ってきたのに驚いてしまった。
頑張って、次も読むぞ。
2017/1/8