ムーミン谷の十一月

2021年7月24日

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「ムーミン谷の十一月」トーベ・ヤンソン 講談社

「ムーミンパパ海へいく」の次はこれ。これで一応、ムーミンシリーズはコンプリートしたかな。

今回は、ムーミン一家は全く登場しない。ムーミントロールも、ムーミンママも、ムーミンパパも、ミイも、どこかへ行ってしまって留守だ。誰もいないムーミン谷へ、ミムラやスナフキンやホムサやヘムレンさんやスクルッタじいさんやフィリフヨンカがやってきて、それぞれに過ごす11月の話。

出て来るキャラクターは誰も彼も強烈な個性があって、実に人間臭い。読んでいて、ああ、あの人みたい、彼みたい、彼女みたい、と現実の知り合いや友人の顔が次々に浮かんでくる。誰も彼もただ優しかったり正しかったりはしない、自分勝手で自分自身と折り合いを付けるのに精一杯で、葛藤してるし、矛盾している。けれど、それのすべてが絶対に否定されない。ぶつかり合ったりいがみ合ったりしながらも、ちゃんとすべてが物語に受け入れられ、容認されていく感覚がある。トーベ・ヤンソンの凄さってこれだ、と思う。

たぶん、子ども時代にこれは読んでいないな。覚えがなかったもの。あるいは読み始めて途中で頓挫してたかも。子供には難しすぎるところもあるのかな。いや、これをすべて受け入れて読めるのが子どもなのかもしれない、とも逆に思うけれど。

ああ、子ども時代の私に会いたい。そして、どう思ったのか、どんなふうに受け止めたのか、彼女とムーミンについて話し合いたい。子どもの気持ちを忘れない大人になろうと思っていたはずなのに、こんなに忘れてしまった。

2017/2/16