ムーミンパパ海へいく

ムーミンパパ海へいく

2021年7月24日

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「ムーミンパパ海へいく」トーベ・ヤンソン 講談社

近所の図書館で行われている読書会の2月のテーマはムーミンシリーズである。それへ向けて、少しずつ読み進めている。「ムーミン谷の仲間たち」の次はこの作品である。

ムーミンパパは海を渡って小さな島で新しい生活を始めることを決める。ムーミン一家は灯台はあるけれど灯台守のいない岩だらけの島に移り住む。そこでの生活は厳しい。

子供の頃に読んだはずなのに、全然ストーリーは覚えていない・・・と思ったら、断片的に読みながら思い出す。ムーミントロールが出会った「うみうま」とか、ムーミンママが猛然と絵を描き出すこととか、ムーミンパパが奮闘努力するけれど、どこか自分勝手なことなど。そして、灯台守のことも、思い出した。

ムーミンパパって勝手よね、と子ども時代に思っていたものだ。いま読み返すと、パパはパパで己の存在意義のため苦悩しつつできることを探してはいるのだけれど、やっぱりムーミンママに頼っているというか甘えている部分はあるよなあ、と思う。ママはママで泰然自若としていて、何より子どもであるムーミントロールに自由と自立を与えている。

ムーミントロールはただただ優しいだけのトロルじゃなくて、反骨心もあり、冒険心もあり、心の中を深く掘り下げる大人びた精神も持っている。

そして、ミイ!ミイは一見、自分勝手で思いやりのない子のようにみえるけれど、冷静な目と判断力を持ち、決して揺るがない自信を持っている。あの子はすごいね。

ストーリーは全然覚えていなくて、ただ、なんだか遠くへ行って大変だけど楽しくもあった日々、みたいな思い出の形で心の中に残っていたこの作品が、実はこんなにハードで厳しいものだったとは。これを子どもが読んで一体どう思うのだ?っていうか、私自身はどう思っていたのだ?あの頃の私に問うてみたい気がしてならない。

個を重んじ、自立を尊び、失敗を恐れず、自分のやりたいことを貫徹する。そういう精神がどこまでも貫かれている。がんじがらめで面倒な家庭の中で、私はこんな物語をうっとり読んでいたのだなあ、と改めて思う。そうか。そうだったのか。

2017/2/8