みつえばあちゃんとボク

2021年7月24日

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「みつえばあちゃんとボク」岡野雄一 西日本新聞社

「ペコロスの母に会いに行く」「ペコロスの母の玉手箱」の岡野雄一。ペコロスの母であるみつえさんと孫のまーくんとのかけがえのない時間を描いた作品。夢や時間が交差して、不思議な世界を広げている。

父が死んだこともあるのかもしれないが、この頃は、如何に死ぬまでの時間を大事に生きるか、ばかり考えているような気がする。若い頃は、何事かを成し遂げたいとか、誰かに認められたいとか、そんな事ばかり考えていたものだが、今となってはどうでもいい。自分が納得できるか、幸せでいられるか。まあ、そんなふうに自分のことばかり考えられるくらい、子どもも手がかからなくなったってことでもあるし、功績なんて今更挙げたところで・・という諦めもあるのかもしれないけれど。でも、生きるって結局こういうことだよな、なんて思ってしまう。

みつえばあちゃんとまーくんの関わりは、暖かく美しく、そしてつまらない日常である。こういう日々の宝物のような輝きを思うと、なんだか泣けてくる。つらい思いや、恨みや怒りは、年とともに消え失せて、きれいな思い出ばかり残っていくのだろうか。つらい思いを重ねたはずの母が、毎日父の写真と語り合っていると聞くと、そういうものなのか、と思う。

2018/12/4