おとうさん

2021年7月24日

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「おとうさんおはなしして」佐野洋子 理論社

 

ルルくんはおとうさんのお膝でお話をせがみます。おとうさんはお仕事で疲れていて、おはなしなんかしらないよ、といいます。でも、ルルくんは言葉巧みに、おとうさんにおはなしをさせます。おとうさんのおはなしは、とってもてきとうで、いいかげん。
 
さいしょのおはなしでは、命令さえすれば、ルルくんに都合のいいけらいが出てきて何でもやってくれては御用が終わると消えちゃうお話。友だちも、用がすんだら消えちゃう。便利だけど、寂しい。最後に、命令じゃ出てこない、本物のお母さんの子守唄でぐっすり眠る、っていうのだけど。
 
ねえ、かあさんて、おとうさんと、ぼくのけらいみたいだね。それに一人で全部するから本物のけらいよりたいへんだね。
 そういって、本当にねた。おとうさんはぎょっとした。そうして、おふろをあらっているおかあさんをじいーっと見ていた。
           (引用は「おとうさんお話して」佐野洋子 より)
 
五つ目の「てんらんかいの絵」というお話は、ちょっとホラーっぽくて怖い。
お母さんがお留守で、おとうさんとお留守番のルルくん。おとうさんは十時なのに起きてくれないので、自分でケンタッキーフライドチキンを作る。手までフライになっちゃうぞ、というおとうさんのところに、両手が白い骨ばっかになったルルくんがくる。今度はお魚の塩焼きが食べたい、というルルくん。ぼくの足、お魚のしっぽに似てるだろ、と行って、しばらくすると半ズボンのしたから骨だけになった両足をみせてくれる。
 
ぼく、頭の料理知らないよ、というルルくんに、あろうことか、かぶと煮って料理を教えてしまうおとうさん。ガイコツがTシャツと半ズボンでやってくる。しかも、最後に残りはスープだといって、たっぷり二時間は煮るんだぞ、と寝てしまうおとうさん。
 
立派なガイコツになったルルくんがおとうさんの周りを飛び跳ねると、トライアングルのようなすんだきれいな音がする。おとうさんの好きなムソルグスキーのてんらんかいの絵をルルくんは演奏してくれる。
 
さあ、どうやって終わらせるんだろう、とちょっと不安になってしまった。ね、なかなかホラーでしょ。これ、高学年の読み聞かせに使いたい、とちょっと思ってしまったけど、さすがにまずいよな・・・。

2014/10/6