かえるのエルタ

かえるのエルタ

2021年7月24日

「かえるのエルタ」中川李枝子

なにをいまさら・・・なんですが。
子どもの頃に、そりゃもう、すり切れるほど読み返した本です。
文章表現の、とある部分を思い出したくて、読み返してみたら、おお、よみがえるあの頃の感覚。
思っていた以上に、私はこの本に影響されていきてきたのだわ、と気がつきました。

私が知りたかったのは、

「どうぞどうぞ。このいすは、ぼくたちのもの。」
「どうぞどうぞ。このバナナは、ぼくたちのもの。」

という表現でした。
いやね、ただ単に、おちびに「これ、食べていい?」って聞かれたときに、「どうぞどうぞ」と言いかけて、おお、これは「かえるのエルタ」みたいだ、でも、どんな流れだったんだっけ?って思っただけなんですが。
読み返していたら、らいおんみどりの「たべちゃうぞ」発言に出会って、懐かしさに震えてしまいました。
トランプをいっしょにしないと、たべちゃうぞ!とらいおんみどりが言うので、かんたが震え上がるんですが、それって、「トランプをたべちゃうぞ」ってことなんですよね。

ばばぬきは たのし
トランプに さわると
手がふるえ むねがなる

というらいおんみどりの歌に再会したら、パーッと目の前が明るくなるかのように、いろんな気持ちがあふれてきました。

何で好きだったか、今読み返すと、すごくよくわかるんですね。
こうじゃなきゃいけない、みたいな押し付けが一切なくって、子供の気持ちをちゃんと全部受け入れてくれる。「たべちゃうぞ」なんて怖いこと言うライオンがいて、スリルもあるんですが、そのライオンがまた洒落っ気があって、ちょっと間抜けで、ユーモラスなんです。

しっかり受け入れ、受け止めてくれる世界と、上質のユーモア。
実は、この作品に、幼い私はどれだけ癒され、励まされていたことだろう、と今更ながらに思います。

うちの子たちは、この本、ちゃんと読んだのだったっけか。
聞いてみなくっちゃ。

(引用部分は「かえるのエルタ」中川李枝子 より)

2010/5/11