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「貴婦人A の蘇生」小川洋子朝日新聞社
この頃、図書館に行っても予約した本を受け取るだけで書棚を眺めることが少なくなった。ネット予約できるのはありがたいことなのだが、本の背表紙を眺めながらぶらぶら歩き、目があった本と思わぬ出会い・・・という状況が減ってしまった気もする。これって本屋へ行かなくなったのと同じことなのかもしれない。でも、この本は珍しく図書何の書棚を眺めていて見つけた。
私が小川洋子ってすごいじゃん、と思ったのは「博士の愛した数式」以降だ。この本はその直前に書かれたものらしい。で、やっぱり「すごいじゃん」とは思えない。思えないのだが、その後の彼女の作品の片鱗というか、うわーすごい、と思うようになったポイントポイントの端緒のようなものがあちこちに散りばめられていて、予兆にあふれた物語のように感じる。
他所の国の不思議な登場人物。奇態な行動を取らずにはいられない誠実な人物。人物の裏に隠された突拍子もない謎。人となりを把握しきれない狂言回し。なぜ、これを？と思うような小道具。（今回は、野生動物の剥製が山程登場する。）一歩間違えば悪ふざけになってしまうような設定が、丁寧に、穏やかに、温かく描写されている。
ここから始まったのか・・・と私は勝手に思ったけれど、それは、まだ他の作品を十分に読んでいないからだけなのかもしれない。これは、私の勝手に決めた「すごいぞ」ポイント以前の本も、読まねばだなあ、と思った次第である。
2015/10/16