とげ抜き

とげ抜き

2021年7月24日

「とげ抜き 新巣鴨地蔵縁起」伊藤比呂美

連休中に実家に帰って、ついでに東京の友人たちにも会って来た。声をかけたら、何人も集まって来て、わいわいと話し込んだのだけど、この年になると、みんないろんなものを抱えている。

自分の体調もそうだし、親の介護や病気もあるし、子どもたちもそれぞれに苦労があるし、夫もあちこちガタが来ていて、おまけに気持ちもすれ違いがちだったりして。
悩みがないなんてヤツは一人もいない。
それでも、馬鹿話して、大笑いして、それだけで、ずいぶん元気になるのだけれどね。

で、伊藤比呂美です。
もう二十年以上も前に出た「良いおっぱい悪いおっぱい」は、私には、結構大きな意味を持つ本でした。
面白かったんです、すごく。
あの本を読んで、子どもを産んでもいいかな、って思ったもんです。
あの時生まれたカノコちゃんが、この本では、もう、二十歳です。
サラちゃんだって、お年頃です。
おまけに、もう一人産まれてたのね、うちのおちびくらいのが。
そりゃたいへんです。
ガイジンの夫と、病気がちの、ちょっと分からなくなりかけてる両親と、夏休みには日本に来て日本語も何とか覚えさせたい小学生と、過食になってしまっている娘と・・・。
アメリカと日本を行ったりきたりして、駆け回って、あちこちのほころびを何とかしようとしている比呂美さん。

はあ・・・。読んでるだけで、疲れます。
でも、多かれ少なかれ、こうなんです、私たちの年代の女たちは。
いろんなものを抱えて、何とかうまく行かせようと、がんばってるんです。
自分の問題も、後回しにしながら、でも、忘れることもできずに。

私は、伊藤比呂美さんの文章が好きです。
だらだらと書き綴っていますが、心の中のいろいろなものが、読みながら、ずるずると引き出され、ぐじゃぐじゃとひろがり、ああそうなんだ、生きてるってこういうことなんだ、と思うのです。

解決を求めているのではなく。
聞いて欲しいんだな。
話すだけで、確かに楽になるって事は、ある。
伊藤比呂美さんの文章を読んでいて、そう思います。

2009/9/29