政と源

政と源

2021年7月24日

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「政と源」三浦しをん 集英社オレンジ文庫

 

夫から回ってきた本。面白かった。三浦しをんはうまい。飽きさせないし、ほろっとさせる。どっしり重いわけではないのに、過不足なく大事なことを描いている。
 
昭和の時代を生き抜いてきた、元銀行員のお硬い国政と、腕は日本一だが、それ以外はいい加減なつまみ簪職人の源二郎の深い深い友情。家族のために真面目に働いてきたのに、妻が家を出てしまって孤独な国政と、恋女房を早くに失ってちゃらんぽらんに生きて来たが、若い後継者をいきいきと育てている源ニ郎。真反対の性格なのに、固い友情で結ばれている二人の心の奥にある様々な模様と、次々に起きる出来事。
 
出て行っちゃった国政の妻の心情もわかるし、出て行かれちゃった国政の切ない思いもわかるな~と思っちゃうのは、私も歳をとったせいなのか。誰が正しくて、誰が間違っている、なんて判別を一切しようとしない書きっぷりがまたよろしい、気持ち良い。
 
青梅にあるかんざし美術館に行ったことがある。つまみ簪ってとても美しく繊細なものだったのを覚えている。そういえば、三浦しをんは、そういった日本の伝統的芸術をよく題材に使う。そこがまた、いいなあ。

2017/11/8