カウンセラーは何を見ているか

カウンセラーは何を見ているか

2021年7月24日

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「カウンセラーは何を見ているか」信田さよ子 医学書院

表紙を先に見たら、手が出なかったかもしれない。結構挑戦的な表紙だし、挿絵も同じテイストだ。でも、内容にはマッチしているかもしれない。良くも悪くも、著者は強気で挑戦的な人だからだ。

ご近所に実に個性的な書店があって、店主が何を考えているかがなんとなくわかってくるような本の並びである。その店でこの本を発見したが、そのときは別の本を買って帰った。題名だけを覚えていたので図書館にリクエストしたら想像と違う絵柄の本が来てちょっと驚いた、というわけだ。

非常に率直な本である。同業者が読んだらどう思うだろう。賛否両論あるだろうな、と思う。著者は原宿カウンセリングセンターの所長である。精神科医の元を離れて独自にカウセリング施設を立ち上げた。なぜ精神科医と袂を分かったかについては本書には書かれていない。が、精神科医にはできないことをする、という意思が強く伝わってくる。

カウンセリングはお金をもらうお仕事である、ときっちり書いている。経営者としてクライエントが常に来るように、満足してもらえるように経営努力していることも。それとともに、共感なんてしない、人の気持ちなんてわからない、ともはっきり書いている。実にきっぱりしている。

そういうところが反発を買うだろうとも思う。が、むしろ分かり易くっていいではないか、と思う。そんなに簡単に人の気持ちがわかってたまるか、と思う。少し距離を置いて、客観的に俯瞰してみてくれる人がいることの力だって必要だと思う。

どちらかと言うと、カウセリングセンターを軌道に乗せるための実業家の本音の本という側面もある。一方で、このようなカウンセリングの施設がもっと出来ても良いのではないかとも思う。診断を出し、病名をつける医師とは違う悩める人へのアプローチとして。

後半は著者自身の入院生活が描かれていて、三年ほど前に入院した私は非常に身につまされた。人間観察が好きで、考えたことを誰かにおしゃべりせずにはいられない著者の気持ちはものすごくよくわかった。人の気持ちなんてわからないはずなのにね。

2017/1/12