やさしい猫

やさしい猫

2022年1月15日

2 中島京子 中央公論社

「パスティス」以来の中島京子である。一気に読んだ。

主人公は一人の女の子。彼女のお母さんはシングルマザーで、東日本大震災のボランティア活動の中で知り合ったスリランカ人と恋をした。何度もプロポーズをされて、最初は子供のために断るのだけれど、子供も含めて愛情ある関係性が作り上げられ、ついに結婚する。ところが、ビザが切れてしまっていたのだ。そこからの物語である。

昨年から報道されている名古屋入管収容中に亡くなったスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんの事件を思い出さずにはいられない小説である。人と人が愛情で結ばれて、共に生きていこうとすることを、ビザのため、お金のためと断定し、長期収容して体調が悪くなっても医師にも見せない。入管の担当官の側の職業意識も公平には描かれてはいるが、在留資格を失った外国人に対する入管の対処は、どうしても非人間的だとしか思えない。

アイヒマンの本を読み終えたばかりだからだろうか。なぜ、民族や国や肌の色や文化の違いで、人はこんなにも人を貶めたり否定したり許さなかったりするのだろう、とむなしくなる。転勤族の私は日本中のいろいろな場所にお邪魔してはよそ者として暮らしてきた。同じ日本人同士でさえ、よそ者と地元民は違う扱いを受けることもあった。だから、在留外国人でもユダヤ人でもない私だけれど、そんなにもひどい扱いを受けたわけではないけれど、なんとなく彼らの気持ちは想像できる。私の想像を超える辛い出来事がものすごくたくさんあるのだと知ってはいるけれど。

物語としてとてもよくできていて、その中で、在留外国人を入管がどう扱っているかもよくわかる本である。どうか多くの人に読んでほしい。在留外国人だけでなく、様々なマイノリティがどう尊重されるべきか、も一緒に考えられる本であった。