パスティス

パスティス

2021年7月24日

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「パスティス 大人のアリスと三月兎のお茶会?」中島京子 筑摩書房

 

アブサンというお酒があった。ニガヨモギを主成分とするお酒で、幻覚症状が出るために製造が禁止になり、代替品として作られたのが「パスティス」である。どっちかというと安酒なのであるが、これとシャンペンを合わせた「午後の死」というヘミングウェイ考案のカクテルは非常に美味しい。高級なシャンペンが急激に下品になるけどね。
 
「パスティス」という単語は先行作品の模倣を意味する「パスティーシュ」とともに、ラテン語を語源とし、元をたどると「ごたまぜ」のような意味だそうだ。この本は、底本の模倣やパロディや珍解釈などがごたまぜになった短編を集めたものである。底本になったのは、
 
太宰治「満願」 吉川英治「宮本武蔵」 夏目漱石「夢十夜」 森鴎外「普請中」
コナン・ドイル「シャーロック・ホームズ全集」 映画「キングコング」
宮沢賢治「毒蛾」 岡本かの子「混沌未分」アンデルセン「裸の王様」「親指ひめ」
施耐庵「水滸伝」 民話「桃太郎」 ケストナー「動物会議」
芥川龍之介「寒山拾得」 太宰治「富嶽百景」 ベケット「ゴドーを待ちながら」
 
底本を知っている方が、より楽しめるけれど、知らなくても結構楽しめるかも。
「親指ひめ」には笑ったね。ここに全文を引用したいほどだけれど、やめておこう。

2020/9/18