｢ビトウィン｣ 川上健一 集英社
プロ野球選手を夢見、それがだめになった後は、広告会社を設立し、それからいきなり小説を書いて新人賞をとったけれど、何作か書いたら体を壊し、それから八ヶ岳に引っ込んで、十年。
なーんにもしない生活を続けて、久々に書き下ろした小説が、｢本の雑誌2001ベスト1｣に選ばれて復活した作家。
この本は、十年間、なーんにもしなかった日々の思い出を綴ったもの。
なーんにもしない間に、結婚して、子どもも生まれてたのね。
いわゆる貧乏話。
でも、楽しいの。
楽しそうなの。
釣りばっかりやってるの。
小説が書けて、売れて、生活が立ち行くようになってから、｢あの頃は大変だったけど、楽しかったね｣って言ってる小説。
まあ、そう書ける様になってよかったね、って思うけど。
夫が言うには、この本には宣伝効果があって、今回は図書館で借りたけど、買ってやらなくちゃって思うね、ですって。
「翼はいつまでも」 川上健一 集英社
というわけで、借りてきたのがこの本です。
買ってやらなくちゃ、なんて言っていて、結局図書館で借りました。
たぶん、これが、彼が貧乏しながら、川でヤマメを釣りながら、書いた本なんだと思います。
「ベタなんだよな。でも、物語の神様は降りてるって思う。」
と、夫が言って、渡してくれました。
ほんとに、ベタでした。ベタだけど、途中でやめられない。
しっかり引き込まれて、登場人物が、好きになる。
それって、すごいことなんだと思いました。
夫が、急にビートルズのＣＤはどこだと探し始めて、息子が札幌に持って行っちゃったと分かったら、返せとメールしたり、｢プリーズ・プリーズ・ミー」とネットで探して聞き込んでたりしていた訳が分かりましたわ。
中学生の頃の、透き通った気持ち、がむしゃらな気持ちを思い出します。
私は、こんなにキレイな心の持ち主じゃなかったけどね。
オトナは命令し、服従させる････だから、自分は、そんなオトナにならない。と、誓った覚えなら、私にもはっきりとある。
私は鈴木隆の「けんかえれじい」を思い出し、夫は｢青春デンデケデケデケ｣を思い出したんだって。
気持ちのいい小説です。
機会があったら、ぜひ。
買ってあげると、もっといいかも。
2009/9/14