ミレニアム3

ミレニアム3

2021年7月24日

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「ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士上下」

スティーグ・ラーソン 早川書房

 

さて、三巻です。もう、すぐネタバレになるから、二巻を読んでない人は、以下、読まないことをおすすめします。
 
 
 
 
二巻で絶体絶命のピンチを乗り越えたリスベットが病院に運び込まれる。ところが、一緒に、リスベットを殺そうとしたザラも運び込まれて命を助けられちゃうのね。しかも、同じ病院。元ソ連の亡命スパイであるザラの秘密を守ろうとする公安と、リスベットを守りたいミカエルや周囲の人達の攻防がこの三巻。国家機密やスパイ小説のように見えて、実は、やっぱり女性や子供を痛めつける男たちを告発するという物語であることは間違いない。リスベットの父ばかりか、兄まで登場し、妹や姉の存在も示唆されて、今後の展開が想像されるのだけれど。
 
一巻では、サディスティックな傾向を持つ呪われた家系の話が登場した。そして、二巻、三巻でもザラという凶悪な人物の家族、血統が物語の大きな位置を占めている。リスベットもまた、その中に巻き込まれている。
 
この作者は、実はDVのある家庭に育って、自分の血統に何らかの疑問や恐れを抱いていたのじゃないか、とこのシリースを読みながら、考えていた。夫婦、親子間に行われる暴力や強姦などへの切実さ、そして、そういう傾向を持つ血統を執拗に物語に絡ませるのは、何か自分の中にそういった問題を抱えていたからではないか、と思えてならない。
 
それにしても、色々な伏線が敷かれているので、第四巻が楽しみだわ・・・と思っていたら、なんと、作者、心筋梗塞で亡くなっているではありませんか。しかも、第四巻の草稿を、籍は入れていなかったパートナーと、両親とで争っているとか。ミレニアムの物語世界が現実にも広がっているかのような展開。どっちが勝つの?どっちが正しいの?
 
いずれにせよ、これ以上の新しい物語はほぼ読めなさそうだということだけはわかった。怖いし、つらいからホッとするような、でも、読みたいし。
 
ちなみに、これらの物語はスウェーデンで映画化されていて、そのキャスティングに賛否両論あったとか。これまた、見てみたいような、見たくないような。

2020/4/30