三人の逞しい女

2021年7月24日

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「三人の逞しい女」マリー・ンディアイ 早川書房

 

2009年フランスゴンクール賞受賞作品。著者は、父はセネガル人、母はフランス人の女性である。
 
三人の女性の物語がゆるいつながりを持って提示される。三人ともセネガル人、あるいはフレンチとの混血の女性である。冷血な父親に捨てられて、努力して弁護士になった女性、結婚してフランスに移住したため教師の職を失った女性、フランスに移民しようとして困難に陥る女性。題名は「逞しい」だが、皆、困窮し、苦悩している。それでも、奥底に誇りのような自分を信じる心が常にある。逞しい、とはそのことか。
 
弁護士女性が主人公の最初の物語が一番面白い。後の二つは、どんどん辛くなる。人種問題や移民の問題は、私達とはかけ離れているかのように思いがちだ。が、根本的なところで、人はみな同じように尊厳を持つということ、弱いものを思うがままに支配したがる人間も大勢いるということ、そんな中で、自分に誇りを持つことの意味などが、自分の問題として浮き上がってくる。これは、私達の物語でもある、と私は思う。

2019/8/2