今日を歩く

2021年7月24日

59

「今日を歩く」いがらしみきお 小学館

 

いがらしみきおは15年間、毎朝、歩いているという。毎朝、同じ道を、だ。ウオーキングといえばいいのか。ちょっとした病気をして以来、ずっと歩いているので、おなじみの人や犬ができたり、それが歳をとったり、いなくなったりもする。いわば定点観測を15年間続けているようなものだ。
 
日常を描く漫画である。限定された時刻と場所を、年数をかけて描いているだけなのだが、そこから不思議と哲学的なものが立ち上ってくる・・・気がする。母が死んだ日も歩いた、という章はなんだか胸にしみる。震災の後も歩いた。さっさと歩いていたはずなのに、いつの間にか、歩くのが遅いオヤジになっていた、という発見もあった。人は、年月に教えられることがある。
 
ただ歩くだけが、漫画になる。淡々とした漫画だ。娘が、「こんな漫画受けないよね、売れないよね、買うのうちくらいだよね」と笑っていた。いや、そうでもないかも。こんな漫画に心打たれる人間が、他にも割にいるかもよ、と私は思った。

2016/7/19