平成くん、さようなら

平成くん、さようなら

2021年7月24日

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「平成くん、さようなら」古市憲寿 文藝春秋

 

安楽死が合法化された日本で、年号が変わると自分の存在が古くなっちゃうからという理由で安楽死を選ぼうとしている社会学者と、亡くなった有名な漫画家の一人娘にしてプロダクション代表である恋人。彼女は恋人の安楽死を断念させようとするのだが、彼は着々と準備を進める。そして、自分が死んでも寂しくないように、彼女のためにも手立てを打つ。
 
お金にも才能にも仕事にも全然困らない、東京のど真ん中で生活するカップル。聞いたことがある有名人が次々に登場し、ハイブランドの靴やバッグや服やレストランやホテル、酒に食事。でも、全然ありがたみは感じない。感情が揺さぶられない。淡々としているけど、これ、全然本当じゃない、と思う。生きてる人間の話じゃない、と思う。つまんないよな、本当にこんな毎日なら、死にたくなっちゃうかも、と逆にリアリティが出ちゃったりして。なんていうのもなんだかなあ、な。あっという間に読めたけど、得るものは殆どない小説だった。これ、芥川賞候補作なの?ふうん。私には、わからない。
 
田中康夫の「なんとなく、クリスタル」平成版ってことかしらね。

2019/6/18