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「戸村飯店青春100連発」瀬尾まいこ 理論社
瀬尾まいこは家族を描きたいのかなあ。これも兄弟の物語だ。でも、「幸福な食卓」みたいに重たくはないので、助かる。
優秀だとされる兄と、あんまりできが良くないけれど愛想のいい弟の話が交互に進む。どっちも自分の良さをよくわかっていない。相手のことのほうがよく見える。まあ、そういうものなのかもしれないね。互いに大事にしあっている兄弟っていいなあ、と純粋に羨ましい。そんな関係性が本当にこの世にあるのだろうか、とちょっと疑ってしまうほどに。
これもまた、悪い人が一人も出てこない物語。でも、世の中に、「本当に悪い人」なんてめったにいないんじゃないか、と私は密かに思っているので、それは特に違和感はない。悪い人ってのは、誰かのフィルターを通したからそうなるのであって、大抵の人は、自分を「悪の権化」とは思わないものね。まあ、それはおいておいて。
美味しいものを食べるのはしあわせ、とか、一生懸命に生きる、とか、そういうことをストレートに語るのって割と気恥ずかしいのに、それを堂々とやってくれてるなあ、と思う。みんないいやつだなあ、と思って読み終える。こういう素直な物語でいいのか？いいんだよなあ、うん。
2019/12/1