幸福な食卓

幸福な食卓

2021年7月24日

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「幸福な食卓」瀬尾まいこ講談社

 

第26回吉川英治文学新人賞受賞作品。映画化もされているらしい。全く知らなかった。私って何も知らないんだなあ、と時々思う。コミック化までされているというから、相当人気があった作品らしい。
 
「父さんは今日で父さんを辞めようと思う」朝食の食卓での父親の発言から、物語は始まる。母親は家を出て別居中だし、優秀のほまれ高かった兄は大学受験を放棄して、農業に従事している。読み進むうち、父親は、割と最近、自殺に失敗した経歴を持っていることもわかる。なんか無茶苦茶な家族だと思うが、互いに気遣いあい、大事にしあっていて、悪人は一人も出てこない。
 
主人公の佐和子はとても素直な子だ。学校での自分の役目を一生懸命果たすし、勉強も頑張れば成績が伸びる。好きな子ともちゃんとうまくいく。だけど、すごく辛い目に合う。辛い目に合えば、家族がみんな、本当に優しく助けてくれる。みんないい人だけど、それぞれに大変だったり、困っていたりもして、それを乗り越えるのは、それぞれの本人でしかない。
 
病院の待合室でこれを読んでいて、なんだか泣きそうになった。家族ってなんだろう、と思った。子にとって親は、子供時代は助けてくれる人だったとしても、だんだんに自分の世界ができてくると、全てから守ってくれる人ではなくなる。当たり前なんだけどね。自分の問題は自分で解決するしかなくて、でも、傍に寄り添ってくれたり見守ってくれる家族がいるのは、やっぱり助けにはなるわけだが、だからといって、決定打というわけではない。家族がぴったりみんなでくっつきあっている期間なんて短いよなあ。でも、ずーっとくっつき合いっぱなしだったら息苦しいよなあ。
 
なんて考えていたら、長い待ち時間がやけに短く感じた。よし、とりあえず、夫を大事にしようっと。と思った。

2019/12/1