ぢいさんばあさん

ぢいさんばあさん

2021年7月24日

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「ぢいさんばあさん」森鴎外 青空文庫

「切腹考」に引きずられて、青空文庫で読んだ。ちなみに、青空文庫とは、著作権が消滅したり、著者が許諾した作品のテキストをネット上に公開した図書館のようなものである。気軽に読めて、ありがたい、ありがたい。

「ぢいさんばあさん」はあっさりと短い小説である。登場人物の感情はほとんど描写されず、外側から事実だけが淡々と描かれている。

とある隠居所に老人が住み始め、じきにその妻らしい婆さんが同居する。二人は仲睦まじく暮らしている。この二人は、実は遅い結婚をした後に、とある事情で離れ離れとなり、この度37年ぶりに再会し、互いを大事に暮らすようになったのである。

というそれだけのお話。それだけなんだけど、なんだかしみじみと感じ入る。るんという婆さんに気持ちを重ねるところがあるのは私も婆さんに近づいたからか。お家のためにいろいろなことを諦めた鴎外が、こんな物語をかくことで、何を願っていたのだろう、と思うとやるせない。人の幸せって・・・と考えてしまった。

2017/6/20