明治乙女物語

明治乙女物語

2021年7月24日

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「明治乙女物語」滝沢志郎 文藝春秋

 

明治21年高等師範学校女子部が舞台となったミステリ。森有礼や伊藤博文、それにヒュースケンの遺児なども登場する。
 
明治という時代も、その頃の女子学生も好きだ。大好物の題材だとどこかの書評で見つけて予約した本だと思う。確かに面白くはあったのだけれど。
 
でも、女学生たちの意識があまりに現代的で、時代を感じない。また、混血児の車夫が登場するのだが、彼に対する周囲の扱いも、いやいやそんなものではなかっただろうと思えてならない。
 
あの時代は、混血児を忌み嫌ったものだし、そんなにかんたんに周囲に受け入れられるものでもなかったはずだ。平野威馬雄「レミは生きている」を読んだ私には、この本の混血児の扱いがあまりに安易に思えてならない。
 
また、女学生たちの現代っ子ぶりも、ちょっと度を超えている。意識、思想というものは、そんなにかんたんに変わるものではない。明治維新からほんの二十年程度の時期に、そこまであけっぴろげで自主性に飛んだ女性学生たちの会話が繰り広げられたものだろうか・・・・。まあ、これはフィクションだからなあ、そこまで言う必要はないのだろうけれど。
 
でも、どちらかと言うとストーリーよりは、明治という時代を味わいたかった私には、ちょっと物足りない感じはあった。

2017/11/30