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「泣き童子 三島屋変調百物語三之続」宮部みゆき 文言春秋
「おそろし」 「あんじゅう」に続く三島屋百物語の続編。今回も面白うございました。
宮部みゆきの時代物はいい。この人の物語には、人間の本質的な善いもの、真っ直ぐなところへの深い信頼が流れている。身分や権威に惑わされない人を見極める力が感じられる。だから安心して読めるのだ。
この本には、あの世の住人がたくさん登場する。この世に未練を残したり、恨みを残したりしたものもいるが、どこかしら温かく、この世に残されたものを思いやり、気遣う存在でもある。私はホラー小説なんかは大嫌いだが、この物語のようなあの世の住人なら全然怖くない。そして、死ぬのがあんまり怖くなくなるような気すらする。
先日、こまつ座の「頭痛肩こり樋口一葉」を観て来た。それにもこの世に未練を残す幽霊が登場した。恨みを晴らそうと化けて出てきているのに、可愛らしくてユーモラスで少し哀しくてチャーミングな幽霊だ。最後は舞台が幽霊だらけになっちゃうけど、全然怖くない。心が温かくなって、勇気が出てくるようでさえある。これって、宮部みゆきと同じだ、と思った。
この世とあの世はそんなに遠くないところにあって、心はつながっている。ただ、忘れていくことはあるけどね。そんなふうに思ったら、とても気持ちが明るくなった。
2013/7/18