漂流するトルコ

漂流するトルコ

2021年7月24日

小島剛一 旅行人 3

以前この日記で紹介したトルコのもう一つの顔の続編。トルコ政府に弾圧される少数民族の言語をひとつひとつの街を丁寧に歩き回りながら研究していた作者がトルコを国外追放された、その後の話。アジアを旅し、紆余曲折の果てに、トルコに再入国を果たすが・・・。

前作は、抑えた必死で淡々と語られていたが、今度は、もっと感情のある、トルコへの熱い想いが伝わってくる本になっている。前作を書いた経過も描かれていて、短期間で一気に書き上げられたことがわかる。

長い間、トルコを離れていたのに、訪れる町々には、彼を覚えている人が必ずいて、声をかけられる。小さな男の子が、子を持つ親となって、彼の前に現れもする。日本人でありながら、ごくわずかの人しか使わない少数民族の言語を、その方言まで聞き分け、話すこの作者が、どれだけその地の人に尊敬を持って扱われているかがわかるエピソードに溢れている。

政治や思想を超えて、ただ、言語を研究する中で、人を人として誠実に扱う彼のあり方が浮き彫りにされる。

前作を読んでいない人には、分かりにくい本だと思う。
けれど、これは、一人の日本人が、トルコを旅しながら、とてつもなく偉大な研究を進め、それにより多くの人の力となっていることを教えてくれるすごい本だ。
ぜひ、前作と合わせて、多くの人に読んでほしいと思う。

2011/4/6