ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂

ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂

2021年7月24日

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ジョン万次郎 海を渡ったサムライ魂」マーギー・プロイス 集英社文庫

 

土佐の貧しい14歳の漁師の子が無人島に流され、アメリカ船に助けられて船長の養子になり、十年ほど後に日本に帰り着く。ときは幕末、語学力と海外の広い知識、才能により幕臣となり、明治にかけて英語教育や科学技術紹介に大きな業績を残した中濱万次郎ことジョン万次郎。
 
日本において彼の生涯は様々な作家が取り上げ、小説化し、歴史上の人物としてよく知られている。実は、アメリカでも彼の業績はよく知られていて、伝記もでている。そんな彼を主人公にした児童文学がアメリカで出され、2011年のニューベリー賞オナーに選ばれた。この本である。
 
ジョン万次郎についてはいくつかの本で知っていたが、それはすべて日本における彼の姿であった。この本は、彼がアメリカ船に救助されてから、日本に帰るまでが中心となっており、知らないことがたくさん載っていて新鮮であった。
 
漁船が漂流して鳥島に漂着したことも、それがアメリカ船に発見され、救助されたことも、その船長に見込まれて養子に迎えられたことも、アメリカで学校に通わせてもらい、技術も学び、しかもカルフォルニアの金鉱で稼いで日本に帰国したことも、それが幕末という時期だったために在任扱いされるどころか要人として取り入れられたことも、すべてがラッキーの連続である。よくできた話だなあ、と感心するが、これが実話というからすごいね。
 
アメリカには、万次郎が思春期に送ったラブレターを八十すぎまでずっと手元においていたおばあちゃんがいたというから、つまり、それくらい、彼は他の子どもたちと同じ世雨に混じり合って過ごしていたのだなあと思う。じゃないとラブレターなんて出せないし、取っておかないでしょ。それってすごいことだと思う。(え?そこ?と思う人もいるだろうが、私は感動したね。)
 
所々にジョン万次郎が自分で描いた絵が挿絵になっていて、それがまたリアルである。救助された船や、もらったコイン、捕鯨の様子など、本当に見ていなければ描けない絵だ。こんな人が、本当にいたんだなあ、としみじみ思う。
 
この本、中学生や小学校高学年の夏休みの感想文に良いかもよ。おすすめ。
 
 

2018/8/7