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「大きな鳥にさらわれないよう」川上弘美 講談社
どんな本か全く知らずに、川上弘美といえば「センセイの鞄」だな、程度のイメージで読み始めたら、なんとこれはSFではないか。最初はカズオ・イシグロのようだ、と感じたが、読み進めるとそれとも違う。なんとも不思議な味わいの本であった。なんというか、大きな風呂敷を思うがままに広げ尽くしたとでも言うような。
3.11の後に書かれた物語だ、とつくづく思う。私たちの世界の閉塞感そのままが描き出されているような。大きな大きな、でも、小さな小さな世界。顕微鏡を覗いているような、でもそこに広い世界があるような。
暗示的な名前が象徴するものをすべては受け止めきれない。それは、私の知識が足りないのか?そういうことではないのか?歴史を勉強したことで、言葉に込められているのに、今まで受け取れきれなかったものがあることに気づいてしまった今となっては、まだわかっていないものがこの中にあるのでは?とふと疑ってしまう。
ふわりふわりと知らない世界を漂ったようなふしぎな物語だった。
2017/3/28