炭水化物が人類を滅ぼす

炭水化物が人類を滅ぼす

2021年7月24日

83

「炭水化物が人類を滅ぼす糖質制限からみた生命の科学

夏井睦 光文社新書

 

トンデモ本っぽいタイトルなんだけど、外傷の湿潤治療を推進した人だと知って、ちょっと見直す。だって、少し前まで傷は「消毒して、乾かす」が定番だったのに、今じゃ「水だけでよく洗って、湿った状態を保つ」が基本だものね。常識はひっくり返ることがある。
 
夫が、この本を私に見せて、「面白かったよ」だけじゃなく、本当にプチ糖質制限をやってみようかな、と言い出した。彼のポッコリお腹に対しては以前から危惧を抱いていたから、何らかのダイエット企画には賛成したい。が、休みの日にお気に入りの蕎麦屋に行くのが至福だという彼に糖質制限は酷ではないか、と心配になった。いや、ハードな制限じゃなくて、夕食だけご飯抜きとか、プチだから軽いもんだよ。何しろ酒も揚げ物も好きなだけ食べていいんだぜ、と夫はいう。
 
私は血糖値が高い。決して太っているわけでもなければ、甘いもの好きでもない。食べる量も決して多くない。だのに、十年以上、血糖値が投薬ラインギリギリだ。逆に言うと、ギリギリのまま、それ以上数値が上がらずにずっと保っている方がすごいらしんだが。
 
確かに炭水化物は好きだ。ご飯も好きだし、麺類も好物。菓子類はそれほど好まないが、飲むなら日本酒、ビール。食生活から糖質を排除したら、どうしたらいいかわからない。そうか、おかずだけ食べてればいいのか。夫に付き合って、私もプチ制限、ちょっとだけやってみるか。
 
この本は、人類がどのようにして現在のように炭水化物に頼るようになったか、炭水化物はほんとうに必要なのか、科学的に解明しようとしている。ものすごく詳しく書いているのだけれど、あんまり科学的じゃない私は時々迷子になった。面白かったのは、たぶん筆者の意図とは全く別の場所だ。
 
農耕というのは、「将来得られるであろう食物のために、半年間、労働を続ける」という作業であり、半年後の収穫に対してよほど強い確信がなければ続けられるものではない。「未来のために、今は苦しいけど頑張る」という意識・考え方はおそらく、農耕が始まってから生まれたものであろう。               
             (引用は「炭水化物が人類を滅ぼす」夏井睦 より)
 
私は農耕民族じゃない人間を何人か知っている、と思った。夫も同じ人を思い浮かべたんだってさ。
 
炭水化物を摂取してから一時間半ほど経つと猛烈な眠気に襲われる、という指摘はまさにそのとおりだ。私は芝居の幕間でご飯たっぷりの幕の内弁当を食べて、午後の部に熟睡してしまった苦い経験がある。以来、観劇前には炭水化物を控えるようにしているもの。
 
日本糖尿病学会の人たちが、なぜ糖質制限を認めないのかについても書かれている。念のため、ネットで学会の方の主張も読んだ。どっちが正しいのかなんて素人にはわからないよ。体調が悪くなったり、効果がなかったらやめればいいし、そうじゃなくてもそのうち飽きるかもだけど、夫がプチ制限をするというのなら、適当な範囲で付き合ってみようかな、と思った次第である。
 

2014/9/13