老後と介護を劇的に変える食事術

老後と介護を劇的に変える食事術

2021年7月24日

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「老後と介護を劇的に変える食事術

食べてしゃべって、肺炎、虚弱、認知症を防ぐ」

川口美喜子 晶文社

 

ミカンさんから教えていただいた本。ミカンさん、ありがとうございました。
 
昨年は、崖から転がり落ちるかのようにみるみる老いていく父を追い、捕まえ、留まらせようとあがき続ける一年であった。父は、足が衰え、かかりつけの歯科にタクシーを利用してすら通いきれなくなった。訪問診療の歯科に切り替えた途端、義歯に問題が出始め、食が進まなくなり、どんどん痩せた。それと同時に鬱傾向も始まって、口数も減り、認知も衰えた。家族総出で以前のかかりつけ医まで運び込み、助言をもらったりもしたが、なかなか事態は改善しなかった。何度も義歯を調整してもらい、好物を食卓に並べ、一緒に食べる機会を増やしたりしながら、徐々にまた食べられるようになっては来たが、結果的に自宅での介護は限界を迎えるに至った。
 
この本は老後、食べること、しゃべることがどれだけ大切か、どのようによりよく食べるか、しゃべることを保持するかを教えてくれる本である。健康にいいとされている粗食が実は老人にはよろしくないこと、栄養の吸収率が下がるので、しっかり食べるのが大事なこと、美味しく食べるためにどんな工夫ができるか、そして楽しくしゃべることがどんなに大切か、を丁寧に説明してくれている。
 
父の姿を見続けた私には、頷くことばかりである。そして、それは父や、これから来るであろう母の問題だけではなく、私自身や夫の問題でもあり、いつの日かわが子たちにも関わってくる問題である。恐ろしいことに、どんな人もいつかは老いるし、死ぬのである。ということを、ここ数年のうちに、まざまざと知らされて来た私である。
 
食べること、しゃべることが好きな私にとって、食と会話は生きることそのものでもある。それを今以上に大事に、上手に、工夫して保持していこうと改めて思える一冊であった。一人暮らしになって、お昼を食べるのがめんどくさい、などと言っている母にも勧めたい一冊であった。
 

2018/3/4