読むって、どんなこと?

読むって、どんなこと?

2021年7月24日

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読むって、どんなこと? 「わたし」の言葉で考え抜け」

高橋源一郎 NHK出版

 

図書館で探したけれど、ない。ムック本なので、今、手に入れておかないと、雑誌の波に飲み込まれて二度と読めないかもしれない、と考えて、購入した。買って正解、と思える本だった。
 
「誰でも読むことはできる、ってほんとうなんだろうか」と「はじめに」にある。読むとはどういうことか、をこの本は追求している。授業形式で、六時間目まで。一時間目と二時間目では、簡単な文章を読み、三時間目には、(絶対に)学校で教えない文章を読み、四時間目には(たぶん)学校では教えない文章を読み、五時間目は学校で教えてくれる(はずの)文章を読み、六時間目に個人の文章を読む。
 
様々な文章が登場する。それらに触れるだけでも、意味のある本だ。これに登場する「(絶対に)学校では教えない文章」を、私は読んだことがある。感動すらしたことを覚えている。それは、AV女優の話である。
 
世間では蔑まれる立場にある人の文章も、文豪の扱いを受ける人の文章も、戦地での自分の行いを勇気を奮って描いた人の文章も、ずしんと深いところに響いてくる、という意味で、全て対等に扱われる。読むというのは極めて平等でフラットで美しい行為だなあ、と改めて思う。どんな偉い人も、卑しい人間も、活字の上では同じだからね。
 
ここに登場した武田泰淳の文章を読んでみたいと思う。鶴見俊輔の最後の文章を、美しいと思う。文章を通じて、人は、なんと深く伝え合えるのだろう、とも思う。
 
読むという行為の強さ、深さ、美しさを思う。そんな本であった。学校では、こんなこと、教わらないよね。

2020/10/1