鞄とダンジョンと本の話

鞄とダンジョンと本の話

2021年7月24日

「鞄図書館」芳崎せいむ〈漫画〉

題に惹かれて、見もしないで買ってしまったけれど、ビニルをはがして、あちゃ-、と思った。
絵柄が、シリアス風で重そうに思えたから。
でも、読み始めたら、印象は変わった。

どんな本でも出すことが出来る、鞄図書館。
しゃべる鞄と、司書さんのコンビ。
命綱をつけて、鞄の中に入れば、そこには、無限の広がりがあり、どんな本だって、見つけることが出来る。
でも、かばん修理のおやじさんに言わせりゃ、それは堅気の仕事じゃないらしい。
時空も超えるらしい、この鞄。

ゲーテが時々引用されるのが、素敵。
いろいろな本が登場するのも、素敵。
本好きの心をくすぐる漫画。

夫が、読み終えて、「うちにも鞄図書館が欲しい。」とつぶやいた。

本が増殖し続ける我が家。
四棹の書棚に二重に詰めても溢れ返っている上に、さらに。
某所に運び込んでいた蔵書を、とある事情で引き取らねばならなくなって、ダンボール30箱程を、倉庫に積みあげることになってしまった。

そこへ、春から、新しい人生に乗り出す友人から、リンドグレーンの蔵書を引きとってくれないかという連絡が。
私にとっても、本にとっても、それが一番良い落ち着き場所ではないかと。
私も、そう思う。
ああ!毒くわば皿まで、じゃないけれど、これだけ本が増えるのなら、リンドグレーン十冊程度、変わりゃしない。
リンドグレーン本には、幸せな余生を。

「読む力・聴く力」河合隼雄 立花隆 谷川俊太郎の中で、立花隆が、自分の生涯を振り返ると、本の置き場を拡大するために働いてきたということになる、そして、今は書庫に住んでいる、と話していたのを、印象深く思い出す。
夫の夢は、蔵書をすべて、ずらっと並べられる書庫を作ることだという。

芳崎せいむには、「金魚屋古書店出納帳」という著書もあって、なんと、これは、ダンジョン(地下迷宮)を持つ、「手に入らないものはないと言われる伝説の古書店」の話。いやはや。
「で、今や、うちの倉庫は、半分ダンジョンみたいになってるってわけだ。」と、夫は笑ったけれど。
どーするのよ、転勤族。
今は、倉庫のある住宅にたまたま住んでいるから、まだいいけれど、これ背負って、全国流れ歩くわけ?
倉庫のない住宅になったら、何処に置けばいいの?

ああ、鞄図書館が欲しい。

2010/2/3