阪急電車

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2021年7月24日

「阪急電車」有川浩

阪急今津線沿線に住んでました。とても住みやすいところで、東京に転勤が決まったとき、ここに家を建てて終の棲家としてしまおうかという議論が出たほどです。老後に戻ってくるのもありかな、なんて夫婦で話し合ってました。

なんというか、程よい街なんですよ。土地柄、住んでいる人たち、山、緑、夜景、川、すてきなお店。この小さな路線の、ほぼすべての駅に降りたことがあります。自然は豊かだけど、田舎過ぎず、都会過ぎず、威張りすぎず、さりげないけれど、どこか洒落た感じもあって、大阪にも神戸にも近くて。食べ物屋さんのレベルが、とても高い。とりわけ、洋菓子とパンは、はずれがありません。

東京で、今津線沿線に住んでいたという人とたまたまお話しする機会があって、「ああいうのが、本当の人間の生活だと思うわ」と言われました。なんとなく、わかる気がします。

というわけで、懐かしい本ではあります。舞台が、まんま、阪急今津線ですから。出てくる駅、みんなわかるし、あのうるさいおばちゃんたちがランチに行ったのは、あの店だわ、とか、「討ち入り」のあった宝塚ホテルは古いけど趣があって素敵よね、とか、小林の小さいスーパーと大きいスーパーは○○と××で、ドラッグストアはあそこね、とか。ちなみに、「二つ使えてずるい」と登場人物が言われた宝塚中央図書館と西図書館、どちらも使ってました、私も。そういうノリでいえば、すごく楽しい本でした。でも。

有川浩の本は、確かに面白いのだけれど、アイディア勝負みたいなところがあると思います。有川さんのお部屋には、数十個のお面が転がしてあって、登場人物には、その中から選んでかぶせてしゃべらせてる、みたいな気もします。どの本でも、同じお面、使い回してるんとちゃうか、と、疑いたくなるような・・・。なんか、うっすいんですよ。人が。人となりと言うか、思想と言うか、価値観と言うかが。

最初のとっかかりはいいけれど、何冊も読んでいくと、あ、またか、と思うようになる。飽きるんですかね。有川浩、もうそろそろ読まなくてもいいかな、なんて思ったりもします。面白くはあるんだけどね。

2008/11/17