おいしいごはんが食べられますように

おいしいごはんが食べられますように

182 高瀬隼子 講談社

なんだこれ。ホラーじゃないか。と思った。怖い話だった。なんでこんな本読んじゃったんだろう。そう思って、検索してみたら、なんと芥川賞受賞作品だった。うーむ。いわゆる文学受賞作品と私は、ほぼ相性が悪い。そもそも賞に興味がないので、読んだ後で受賞作だと気が付くことが多く、これもその一つだったんだが。まあ、これだけぞっとする、ということはある種の真実を描いているということなのだろうなあ。

同じ会社で働く二人の女性がいる。片方は、体が弱くてすぐ早退するし、仕事はあまりできないが、女性らしい気遣いにあふれていて、守ってあげたいようなタイプ。料理やお菓子作りがとても上手で、手作りお菓子を職場で配ったりする。

もう片方は、仕事ができるタイプ。やり始めたことは最後までやるし、やらねばならないことの見極めがつく。思いやりや気遣いというものはあまりないけれど、きっぱりしている。その二人の間に立った一人の男が、守ってあげたいタイプと付き合いながら、きっぱりタイプに「私、あの子嫌いです、一緒に意地悪しませんか」と言われて、その気持ちが分かってしまうし、たまに飲みに行ったりするし、あげくに手を出しかけたりさえも、する。

まあ、女性二人と男性一人の関係性がそれぞれの視点から描かれて、最終的にこうなりました、というお話なんだけど。世の中でありがちな展開ではある。が、もう、この男の煮え切らなさがたまらん。一番嫌いなのはこいつだ、と思う。女性の方はそれぞれに、自分はこうである、とわかってるし、自分なりの役割を果たしている。だが、この男はなんだ。何もしない、何も言えない、何も決めない。でも、多いんだろうなあ、こういう男。うんざりだよ。