表紙はうたう

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2021年6月15日

42 和田誠 文芸春秋

「表紙はうたう 完全版」が最近発刊されたけれど、これは2008年版。1977年から2008年までの和田誠の「週刊文春」表紙絵の画集である。これが発刊されたとき、もちろん和田さんはまだお元気で、やめろと言われるまで描きたいと語っていらっしゃる。実際には2017年の2000号まで描かれておやめになった。

先日、テレビ「美の巨人たち」で清水ミチコが和田誠を紹介していた。和田さんの原画や画材は多摩美術大学に寄贈されたそうだ。その番組が面白かったので、夫がこの本を図書館で借りてきた。買ったら一万円近くするのよ。図書館ってありがたい。

和田さんの絵は、明るくて、すっきりして、センスが良くて、なんだか元気になる。あんなに元気な奥さんと毎日過ごしていたから、こんな絵になったのかな。それとも和田さんも、もともとこんな人だったのかな。この画集は、郵便とか風景とか置物とか動物とか、いろんなテーマ別に絵が集められているのだけれど、どれも楽しい。「都会のメルヘン」と編集長からは注文されたそうだが、確かに絵の中に物語があったり、空気が動いていたりする。子供たちとの旅行先とか、レミさんの台所の道具とかも描かれている。本当に、いい絵だ。

レミさんは、和田さんが亡くなって悲しくて悲しくてならなかったみたい。婦人公論だったかな、雑誌で清水ミチコと阿川佐和子と話していた。和田さんはレミさんが大好きで、ある時、和田さんの服に長い髪がついていたので疑って見せたら本気で怒られて、私、謝ったのよね、と言っていた。阿川さんのこと大好きだけど、僕はレミが一番だからね、と言われたと阿川佐和子が笑って言っていた。出会って数日で結婚を決めたんだって。麻雀仲間の久米宏が紹介したらしい。いい夫婦だったなあ。和田さんがいなくなって、レミさん、大変だろうなあ。

膨大な表紙絵を見て、ほのぼのと嬉しくなる。いい人柄だったんだろうな、と絵だけでわかる。構図も線も色も、ピタリと決まってあるべき状態にある、と思う。音楽も、エッセイも、映画も、みんな素敵だった。あんな人、なかなかでてこないわ。和田さん、天国でも絵を描いてね。