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「きらめく共和国」アンドレス・バルバ 東京創元社
1994年、ジャングルと茶色い川のある亜熱帯の町に、理解不能な言葉を話す子どもたちがどこからともなく現れた。彼らは物乞いや盗みをし、最後にはスーパーを襲撃して何人かの人を殺した。そして、どこかに消え去った。数カ月後、その32人の子どもたちは一斉に命を落とす。なぜ、そんな事が起きたのか、22年後の今、当時、社会福祉課の課長であった主人公が謎を紐解いていく。
奇妙な物語だった。ウイリアム・ゴールディングの「蝿の王」を思い出したり、アマゾンの流域に住む文明社会と接触したことのない先住民たちの話、NHKのドキュメンタリー「アウレとアウラ」を思い出したりした。
破滅の予感を持ちながら読みすすめるのはしんどかった。が、妙に引き込まれる物語ではあった。子どもの無垢さと残酷さ、暴力性と、それを見て見ぬ振りをする大人の無力さ、だらしなさをひしひしとリアルに感じてしまった。で、結局?と最後に唸ってしまった。なにか足元のしっかりした土地がふわふわと頼りなく感じられるような気持ちにもなった。
この作者は「二人は世界一」という児童文学も書いているらしい。読みたいような、読みたくないような。
2021/1/30