シリアの戦争で、友だちが死んだ

シリアの戦争で、友だちが死んだ

2021年7月24日

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「シリアの戦争で、友だちが死んだ」桜木武史 武田一義 ポプラ社

 

何を隠そう、私は怖がりである。人がバンバン撃たれる映画や、ギャンギャン斬り殺されるチャンバラなどは非常に苦手である。でも、そういうものにも興味があるから、それらと出会うときは予め覚悟をして、心をうすーくして、臨場感が出ない心構えを固めてから見るようにしている。
 
この本は、死んだのは友だちなのだし、後からそれを知った的なことなんだろうな、と勝手に想像して油断しておった。そしたら、読み始めてすぐに、本人が顎を縦断で撃ち抜かれちゃった。痛かった。怖かった。マジで怯えた。まいったね。
 
本文を書いている戦場ジャーナリストと、漫画家との共著。ジャーナリストのほうは、戦場でいきなり顎を撃たれたら、仲間のジャーナリストが皆一斉に自分を撮っているのを見て、「なんて奴らだ!」と血まみれになりながら思ったそうだ。写真なんて撮ってないで俺を助けてくれ!と心から思ったそうだ。自分もスクープを求めて戦場まで来ていたくせにね。
 
でも、現場の生々しい実態を全世界に知らせる役割を担う人がいなければ、虐げられている人たちは、ずっとそのままだし、戦禍は広がる一方だ。その後、日本で何度も手術を受けて回復した彼は、やっぱりまた戦場に出ようと思ったし、写真を撮ろうと思ったという。その気持ちの流れや変化が、ちゃんと伝わってくる本だった。
 
アサド政権に反旗を翻した友だちが彼を戦場に連れて行ってくれた。そこで様々な現実を報道し、そして彼が帰った後に、友だちは死んだ。何人も、死んだ。普通の生活、学校へ行ったり、家族を作ったり、日々を暮らしたり。それらをできないままに若くして友だちは死んでいった。そういう現実が、日常の繋がりの果てにある。
 
これは子供向けの本だという。読むのはハードだけど、子どもたちにも読んでほしい。戦争ってどんなものか、人が死ぬってどういうことか、自由って何なのか、私達の普段の生活ってどんな意味があるのか。もう一度、考え直すきっかけになってほしい。

2021/2/16