くよくよマネジメント

くよくよマネジメント

2021年7月24日

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「くよくよマネジメント」津村記久子 清流出版

「浮遊霊ブラジル」の津村記久子さんである。飄々として淡々として冷たくて温かくて冷静で感情的なふしぎな持ち味の作家さんである。大好きだ。

そんな津村さんにしては珍しい読み味であった。最初は、なぜ、こんな自己啓発本みたいな説教臭い文章を?と思ったのだが、読み進むうちに、ほほう、なるほど、と思うに至った。そうか、この人の中にはこういうものがあったのだな、と。

小説というのは具体的な事象、具体的な人物を描くことで何かを伝えていくものだが、この本はもっとむき出しの観念というか、物の考え方があからさまに書かれている。それが最初はうっとおしかったのだが、書かれている内容はまさしく津村さんそのものであった。2010年から2013年の間、雑誌に連載されたものをまとめてあるのだが、その期間、彼女はいろんなことに悩み、くよくよし、これを書きながら自分を整理していたらしい。

「くよくよしてもいい」「問題から手を放す」「心配とつきあっていくこと」「自分を幸福だと感じられる能力」などなど、表題を見ただけでも、そうだよなあ、と思えてくる。私はくよくする質だし、すぐに愚痴を言うし、心配症だ。ただ、結構、自分を幸福だとは思っている。そんなわけで、これを読むと実に共感できてしまうのだ。「すべてだめな時は、せめて休息を」なんて、もう、すごく慰められちゃう章である。

本日、私は大事な友だちをすっぽかすという大失敗をした。それも私からお願いして日時を設定したにも関わらず、ほかの心配事で頭が一杯になって、すっかり忘れてしまったのだ。あああああ、私ってなんてダメなの!!!とまさしく今、くよくよしている私である。こんな私を許そうとはとても思えないが、せめて正直に謝る、自分のダメさ加減に陶酔しない、それだけは完遂しようと思う。

生きているってくよくよすることだ。だけど、そんなくよくよをなんとかマネジメントして、自分を貶めることだけは避けたいと願う。津村さんは私よりずっとずっとお若いのに、本当によくわかってらっしゃる、と思った。ああ、反省。

2017/3/30