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「そばですよ 立ちそばの世界」 平松洋子 本の雑誌社
そばが好きである。最近は、週末ごとに鴨せいろか鶏南蛮を作って食べている。食べ続けても、全然飽きない。
この本は、立ちそば店を取材して「本の雑誌」に連載した記事をまとめたものである。あくまでも個人の味を守る店を対象にしているので、朝早くからだしを引き、つゆをこしらえ、天ぷらを揚げる、地道な店ばかりが紹介されている。
読んでいると、そばが食べたくなるったら無い。立ちそば店ばかりだから、ちゃちゃっと麺を温めて、ざっとつゆを入れて、すぐに出されるようなそばだが、なんともうまそうである。東京の店ばかりだから、引越したらいくつか行ってみようかな、なんて思っていたのに、この騒ぎである。客足が減って、潰れる店がないといいのだけれど、と祈るような気持ちになる。
表紙の、そばを食べているライオンもキュートだが、背表紙ののれんから覗くくまや鳥の後ろ姿もまた、可愛らしい。ああ、こんなふうにみんなでつれだって立ちそばを食べに行ける日が、また早く来てくれたらいいのだけれど。
こんな春になるとは、思ってもいなかった。
2020/4/1