ねずみくんシリーズ

ねずみくんシリーズ

2021年7月24日

169~177

「ねずみくん」シリーズ 作 なかえよしを 絵 上野紀子 ポプラ社

 

恒例の図書館の読書会。今回のテーマはねずみくんシリーズです。
 
このシリーズとの最初の出会いは、耳鼻科の待合室。「ねずみくんのチョッキ」を、長い長い待ち時間の間、三歳の息子の読んでやった記憶があります。
 
広いページの空間の下の方に、ちいさなねずみくんがいて、上の余白が大きく空いているのが印象的でした。小さな子にとって、この世はこんなふうに見えているんだろうな、と思いました。
 
ねずみくんはとても小さくて、力も弱くて、そのせいで、困ったことがたくさん起きます。でも、大きかったり、強かったりするお友達も、それぞれに困ったこともあるし、親切でもあって、そしてねみちゃんというガールフレンドはとても強気だったりもします。ねずみくんは窮地に立たされても、最後にはちゃんと解決しますし、どっちかって言うと、大きくて力の強い仲間を許したり、助けたり、喜ばせたりするのです。これは、小さい子供には嬉しいお話だよな、と思いました。
 
ねずみくんは、気の強いねみちゃんが大好きです。ねみちゃんは、ねずみくんのチョッキを他のお友達にうっかり又貸ししてしまって、ビローンと伸びちゃったのをフォローするために、せっせと編み物をしたりしますが、あんまりうまく行きません。ごちそうしてあげる、とねずみくんを招待しますが、他のお友達も呼んじゃったねずみくんを叱りつけたりもします。ねずみくんは、あろうことか、ねみちゃんとの幸せな結婚や家庭生活まで妄想します。(「ねみちゃんとねずみくん」)そこではねみちゃんが料理をし、子どもを育て、おそらく仕事に行くだろうねずみくんにドアのところで手をふったりもします。
 
おお、この役割分担の感覚。小うるさいおばさんだと思われるかもしれませんが、なぜ、ねずみくんも一緒に料理をしない、編み物をしない、子育てをねみちゃんに任せる。と、思わずにはいられません。ねずみくんが、招待されて食べる側、編んだチョッキを贈られる側に固定されるのはなぜなのでしょう。それは、物語の本質とは離れたこと・・・なのかもしれませんが、やっぱり気になる私です。
 
作者のもつ時代性の軛からのがれられなかった、ということでしょうか。「ねずみくんのチョッキ」はとても面白く、うれしい絵本でした。他の絵本も、それぞれに楽しめます。楽しめますが、同じことを繰り返すのなら、チョッキ一冊でいいじゃないか、と何処かで思います。毎年新刊を出すって、どうなんだろうねえ。どんどん薄まっていってるようにも感じますが。
 
 

2018/3/7