ピスタチオ

ピスタチオ

2021年7月24日

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「ピスタチオ」 梨木香歩 筑摩書房

梨木さんは何処へ行くのだろう。
「家守綺譚」や「ぐるりのこと」は好きだ。
でも、なんだかよく分からない、好きになれない本もある。
どうしてこんなに両極端なんだろう、といつも不思議になる。
それは、梨木さんのせいではなく、私の問題なのか?

「ピスタチオ」は最初とても面白くて、わくわくしていた。
飼っている犬が病気になって、手術を受けさせながら、アフリカにいる友人の思い出話が並行して語られ、また、結婚はしていないがパートナーである男性との関わりも静かに続けられていて。
ものを書くということへの姿勢も、とても好ましく感じられた。

アフリカに主人公が飛ぶ辺りから少し不思議なことになってきた。
私は中島らもの「ガダラの豚」を思い出した。
アフリカの呪術を、現実のものとして受け入れる感覚がとても似ていたし、この世のものと思えない世界を見せてくれたからだ。

けれど、その後の展開は、(私には)唐突で、いろいろなものが置き去りにされたまま、ひとつの物語が語られて、終わってしまった。
楽しみにしていたことが、いきなり消えてなくなったように、がっかりしてしまった。

私の読解力がないのだろうか。
梨木さんは、いろいろなことをぽんと投げかけて、そのまま行ってしまう、そんな気がした。

2011/7/16