歌舞伎のぐるりノート

歌舞伎のぐるりノート

2021年7月24日

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「歌舞伎のぐるりノート」中野翠 ちくま新書

「歌舞伎 家と血と藝」を読んで以来、妙に歌舞伎役者の家系に詳しくなってしまった。先日はNHKのファミリーヒストリーで中村獅童が取り上げられていたが、いやいや、あの一族、どの一人を取り上げても番組が一つ出来ちゃうほどドラマチックなんだから。

勘三郎を失うという痛恨の出来事があって、もう歌舞伎なんて見ないのかもしれないなんてふと思うこともあったが、やっぱり歌舞伎はいい。この本には歌舞伎への愛があふれていて、胸打たれる。そうだよね、やっぱり歌舞伎、見に行かなくちゃ、と思い直す。

中野翠は、高校生の時に歌舞伎を一度見たが、その良さがわからなかった。が、大学時代に中村歌右衛門を見てすっかり魅了されたという。その歌右衛門の舞台をとある記事で褒めたところ、勘三郎がすぐに歌右衛門に伝えてくれたそうだ。すると、なんと歌右衛門直々のお礼の電話が中野翠宅に・・・留守だったので、留守電に入っていたのだ!そして、その後、一生にたった一度、歌右衛門に会いに行った話が書かれている。これが素晴らしい。正に「拝謁の義」であった。

この本には、短いコラムがたくさん詰め込まれている。どれもが歌舞伎の魅力に関わる話だ。これを読んでいると、歌舞伎を見に行きたくてうずうずしてくる。歌舞伎なんてとっつきにくい、一度も見たことがない、という人もどうか試しに読んでみてほしい。行ってみたくなるからね。

2013/10/22