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「島暮らしの記録」トーベ・ヤンソン 筑摩書房
言わずと知れたムーミンシリーズの生みの親、トーベ・ヤンソンとそのパートナー、トゥーティ、それにトーベの母、ハムの三人が、水平線しか見えない小さな島(というより、小さな岩礁)に小屋を立てて暮らした日々の記録。淡々と事実だけが描かれているが、なんと力強く、恐れを知らず、自立心に富んだ人たちだったのだろうと感嘆してしまう。
その岩礁と小屋の写真があるのだが、本当に小さな、木も草もない岩場にぽつんと小屋だけが建っている。そして、そこにとんでもない嵐が吹き荒れるのだ。
トゥーティの描いた島の風景が章ごとに載せられている。色彩のない水彩が、島の孤独と自然の美しさを表している。
こんな場所を愛し、嵐を楽しむ心を持っている人が、ムーミンを描いていた。そう思うと、あの物語がまた違った色合いに見えてきそうに思える。
小屋を建てるまでのあれこれは、読んでいてワクワクしたけれど、私はここに住めるほど孤独に強くはないと思った。
2015/6/22