死に山

死に山

2021年7月24日

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「死に山 《ディアトロフ峠事件》の真相」ドニー・アイカー 河出書房新社

 

「死に山」である。「死の山」でも「死ぬ山」でもない。それがなんだ、といえばそれまでだが。夫が「リーダビリティがすごい」と言っていたので読んでみたが、なるほど、一気であった。
 
1959年、ソ連のウラル山脈で起きた学生を含む若者たちの遭難事故。チーム九名は、氷点下の極寒だと言うのに、テントから一キロ半も離れた場所で、衣服もろくにつけず、全員靴を履かず、凄惨な死に様で発見された。三人は頭蓋骨骨折などの重傷、女性一人は舌を喪失。遺体の着衣からは異常な濃度の放射線が検出された。最終報告書は「道の不可抗力によって死亡」としか書かれていない。一体彼らに何が起こったのか・・・。
 
この事件に興味を持ったアメリカのドキュメンタリー映像作家がソ連に乗り込み、関係者にンタビューを試み、最終的に現場まで行って真実を確かめた記録がこの本である。1959年当時と現代とが交互に描かれる中で、まるで推理小説を読んでいるかのように謎解きが進む本であった。
 
読んでいる間じゅう、寒くて寒くて、早く温かい日本に帰りたい、と思ってしまった。

2018/12/25