危険な道

危険な道

2021年7月24日

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「危険な道 9.11首謀者と会見した唯一のジャーナリスト」

ユスリー・フーダ 白水社

「私たちの星で」の諸岡カリーマ・エルサムニーが翻訳した、9・11首謀者との会見についての本。作者はカタールの衛星テレビ局アルジャジーラの敏腕ジャーナリスト、ユスリー・フーダ。携帯電話に突然かかってきた、見知らぬ人物からの「特別な番組のための情報」を得るために、何もわからないまま、危険を承知の上でパキスタンに飛び、国際テロ組織アルカーイダの幹部との面会に至る。そこに潜むであろう嘘や罠や危険に警戒しながら、また、いまこの情報を売ればとんでもない大金が手に入るという誘惑と妄想を振り払いながら、まるでスパイ映画のような展開であった。

私たちは9.11についても、ムスリムについても、中東についても、アルカイーダなどの国際テロ組織についても、それらとアメリカの関係についても、本当に何も知らないのだな、と改めて思う。9.11なんて遠い昔の話として、もうすっかり忘れ去っているけれど、いま、まだその問題はホットなままなのだ。いま現在の世界の中で、ずっと続いている。

それにしても、宗教って何なんだろう、とまた思う。汝の敵を愛せよ、と説いたはずのキリスト教は十字軍を組んで中東に攻め入った。異教徒を殺すことは天国に近づくことだ、とムスリムの経典は説いている。人を殺すことこそが、神に仕えること、神に近づくことだと宗教は教えているのか。異教徒は悪魔であって人ではないのか。

もちろん、9.11を始めとするこれらの問題は、宗教だけでは片付かない問題である。だとしても。人を幸せにするはずの宗教が殺し合いを起こし続けていることが私にはわからない。

宗教が違うこと、国が違うこと、肌の色が違うこと、文化が違うこと。そんなことが、殺してもいい理由になるわけがない。私たちは、同じ人間同士だ。誰かを愛して、誰かを大事に思い、日々を大事に生きる人間でしかないのに。そんなあまりにも当たり前な、まるで小学生が作文に書きそうなことを、何度も何度も思ってしまった本であった。

2019/9/29