よその島

2021年7月24日

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「よその島」井上荒野 中央公論社

 

骨董商を営んでいた夫婦と、もう筆を折った小説家が共に小さな島に移住する。住み込みの家政婦は小学生の一人息子がいる。新しい老後の生活が始まる。だが、そこにはあまりに秘密が多すぎた。小説家の作品を原作とした映画の撮影が始まり、売れっ子の俳優がやってくる。それぞれにそれぞれの事情があり、複雑に人間関係が絡み合っていく。
 
骨董商はテレビ出演をしていた時期があり、妻の他に女がいたことがある。家政婦はその女の娘なのか。あるいは、小説家の息子の妻だったのか。俳優は、隠れた息子だったのか。女を殺したのは誰なのか。そこには驚きの展開があった。えええ!そこ行くの?と思ってしまった。でも、説得力あるよなあ、と思う私である。私達夫婦も、いわば島に移住した老夫婦みたいなものである。
 
彼らが以前に住んでいたという都内の場所は、奇しくも私達が本来終の棲家にしようかと考えたことのある場所だったので、身につまされた。

2020/7/6