ガン入院オロオロ日記

2021年7月24日

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「ガン入院オロオロ日記」東海林さだお 文藝春秋

 

東海林さだお氏は、総武線のホームでお見かけしたことがある。肌寒い季節だったのに、素足にサンダルを履いて、正体不明のおっさんであった。おお、この人はショージくんではないか、とつくづく見てしまって、あ、失礼なことちゃった、とあとから気がついた。もう十年くらい昔のことだと思う。
 
東海林さだおの雑誌連載は、意味もなく、つい読んでしまう。いやほんと、意味もなく、なのよ。読んで得るところはほぼなにもないのだけれど、ふふっと笑ってしまう。それで十分なのだ。
 
先日、書店で書棚をぼんやりと眺めていたら、この本の題名が目に入った。え?東海林さだおがガンで入院??と驚いた。いつまででもヘラヘラと存在し続けそうなこの人の漫画やエッセイが読めなくなるのだとしたら、それは問題だ、と心配になった。だけど、買わずに図書館に予約を入れた。ごめんよ。長らく待たされて、やっと手に入った。
 
意に反して、「ガン入院」話はあっさりと一章だけであった。肝細胞癌だったらしいが、レバ刺し一人前強を切り取るだけで、転移もなく、無事に手術は成功した。あとは、点滴の瓶や尿の袋をぶら下げているガラガラ通して歩く器具を「イルリくん」と呼んで彼との関係性について考察したり、尿の色が濃いと恥ずかしいのはなぜか、あれこれ分析したり、いつもの東海林さだおであった。
 
まだまだお元気で頑張れるらしい。よかった。

2017/10/2