ナビラとマララ

2021年7月24日

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「ナビラとマララ」宮田律 講談社

 

2014年に17歳でノーベル平和賞を受賞したマララという少女をわたしたちは知っている。マララさんは2012年10月、パキスタン・タリバン運動の銃撃を受けて重症を負った。なぜなら彼女は教育の権利を求め、人権の抑圧を告発していたからだ。回復した彼女はパキスタン政府やオランダの児童権利擁護団体などから次々と表彰され、ついにはノーベル賞も受賞した。
 
ところで、2012年10月、ナビラ・レフマンという15歳の少女も無人航空機の撃ったミサイルで祖母を失い、自らも大怪我をしている。彼女もアメリカの議会などで自らの被害を訴え、パキスタンの部族地域でのドローン攻撃を停止するよう求めている。彼女を攻撃したミサイルは一発で7万5000ドル(880万円)もするが、そのお金があれば子どもたちの教育に使うことができる、と。だが、ナビラさんがスピーチをしたアメリカ議会の公聴会には435人いる下院議員のうち、5人しか出席しなかったという。
 
加害者が違うだけで、二人の少女に対する扱いは、ここまで違ってしまったのだ。
 
この本は、ナビラとマララという二人の少女を比較しながら、パキスタンや中東、そしてイスラムの歴史を説明し、教育の大切さを訴えている。平和な世界のためには価値観の多様性を受け入れることが大切であり、それを理解するために教育がいかに必要かを訴えている。
 
この本の対象は小学校高学年から中学生とのことだが、正直言って大人が読んでもすぐに理解するのは難しい部分もある。わたしたちはイスラムや中東問題に対してあまりにも無知だからだ。でも、だからこそ、知る必要があり、価値がある。この本のように、子供向けに書かれたものを、わたしたち大人がじっくり読み、理解するところから、日本的あるいは西洋的、キリスト教的価値観だけでない、また違った価値観を許容し、受け入れることができるようになるのかもしれない。

2017/6/6