内なる町から来た話

内なる町から来た話

2021年7月24日

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「内なる町から来た話」ショーン・タン 河出書房新社

久しぶりのショーン・タンである。いつもながら、独特の世界観。今回は、絵よりも文章が主流で、それもかなり量が多いから、読むのに時間がかかる。が、それはなかなかに豊かな時間であった。

ビルの82階にワニが住んでいる。そのことを、誰も知らない。
蝶はランチタイムにやってくる。
高速道路にまたサイが出た。
・・・様々な動物をめぐる物語。

中でも、熊が弁護士を雇って人類を訴える物語は圧巻である。窃盗、略奪、不法占拠、拉致、殺害、奴隷所有、虐待、大量殺戮。どれをとっても人類に勝ち目はない。示談を持ちかけ、大金を準備しても、人類の金に熊は興味を示さない。ただ、人類が最初から持っていなかったものの所有権を放棄せよ、と求められ、私達は無一文となるしかなかった。だから、人類はある処置をした。そして、どうなったのか。

目の前の世界が、いきなりゆらぎ、ぜんぜん違う場所に見えてくる、不思議な物語。
ショーン・タンは素晴らしい。

2020/11/17