少女たちの明治維新

2021年7月24日

73

 
 

「少女たちの明治維新 ふたつの文化を生きた30年」

ジャニス・P・ニムラ 原書房

 
明治四年、岩倉使節団とともに太平洋を渡った日本初の官費女子留学生たちの十年間の留学生活と、その後の生涯を描いた作品。作者はアメリカ人女性で、日本人と結婚して来日し、三年後にニューヨークに戻ると大学院で東アジアの研究を始め、日本の明治時代に魅せられた。ある日、コネチカット州の教師だったアリス・ベーコンの古い書物を発見した彼女は、そこに「アメリカにおける古くからの親しい日本の友人」とともに東京で過ごした日々の回顧録が載っていた。その友人こそが、官費留学生だった津田梅や大山捨松だったのである。
 
官費女子留学生たちは、六歳から十五歳程度の少女たちであった。留学させると入っても、どこにどんな受け入れをしてもらうかもろくに決めないで、とりあえず連れて行かれてしまい、世話係は自分勝手で、途方にくれる状態から彼女たちのアメリカ生活は始まった。年かさの二人は健康を害して早々に帰国し、三人が十年間の時をアメリカで過ごした。幼い時分にアメリカに送られて、日本的儒教的しつけ、女性のあり方を身につけなかった留学生たちが、帰国後にどんな苦労をし、どんな人生を歩んだのかが、できるかぎりリアルに描かれていて、共感できるところがとても多かった。つまり、彼女たちもごく普通の少女であり、女性であり、喜んだり悲しんだり怒ったりする生身の人間であったことがよくわかったのだ。
 
作者は結婚後日本にわたって、自分が外人として扱われるかなで感じた違和感を、この三人の留学生に投影している。特異な立場に置かれた彼女たちへの深い理解と共感をもって描いているのは、自身の経験があったからだろう。それがとても良く生かされた作品だと思う。
 
津田梅子の伝記は以前に読んだことがあって、なんと強く気高い人だろうと思っていた。が、これを読むと、彼女はぐっと人間味を帯び、いたずらっぽくユーモアがあって時にひどく批判的にもなり、自虐的にもなる等身大の人間像が見えてくる。だからこそ、歴史が強いリアリティを持って迫ってくるというものだ。

2016/9/7